ホームひとりごとタイム費用が一番大切?本当の良心とは・・・(Eさん 学生20才)

 8月、お盆前ぐらいだろうか、彼女は他院で行った二重(埋没法)が外れたということで当院に来院された。
実は彼女は以前(高校3年の夏休み)に、当院にも二重のカウンセリングに来ていた。どこで手術を受けようか迷ったそうなのだが、手術をした所のクリニックがかなり安かったのでそちらを選んだと言っていた。
 彼女はそこで2回手術をしていた。最初に手術をしてから1年ほどして二重が外れたので、もう一度同じクリニックに行き、またやってもらったそうだ。そのクリニックは永久保障をうたっていて、2度目はただだったという…。一見良心的にも思えるが…。

 僕は彼女のまぶたを診察した。まぶたが厚い、タルミがある、眼の開きが悪いなどが原因で外れてきたのなら切開法の適応だが、特にそういう問題はなく、普通に埋没法でやればうまくいく感じだった。その診断は前と変わらなかった。

岩本「Eさん、2回目の時って、最初にやった糸は取ったかなぁ?」僕は彼女にとても大切なことを聞いた。

Eさん「分らないです。すぐに手術室に通されて、1回目と違う先生がパッとやってくれました…。」

岩本「そうですかぁ…。Eさん、じゃあ先に洗顔して手術室に入ってもらっていいかなぁ。まぶたの表と裏をしっかり診察するから…」

 僕は彼女のまぶたを詳しく診察した。すると彼女のまぶたは片側に4本ずつ糸があり、どうやら2回目の時最初の糸は外さなかったようだ。まぶたの裏を診ると、瞼板という部分の変形が激しく、今の状態で埋没法を行いどのように糸をかけても前の糸と中で引っかかってしまいそうな感じだった。それでは皮膚と瞼板との間にきれいなゆ着(交通)をつくることは難しく、またラインが消えてゆくのは目に見えていた。

岩本「Eさん、手術は普通に埋没法で出来るんだけど、その前に今ある糸を全部取ったほうがいいかなぁ。今ある糸はまぶたの中のゴミみたいなもので、ただのゴミならいいんだけど、それが僕の今から作るラインを邪魔する悪いゴミなんだよな。それに中で糸どうしが絡んだりして、まぶたがひきつったみたいにずっと違和感が残ったり、ひどい場合は眼が開きにくくなることもあるよ。少し費用は別にかかるけど、まず今日は糸を取った方がいいかなぁ。それで1週間ぐらいしてから埋没法をすれば、絶対大丈夫…。もう外れたりしないよ…。」

 僕は彼女にそう笑顔で言うと、彼女の顔は少し困った表情に変わった。
そして彼女は少しいら立ちを交えた言葉で僕に言った。

Eさん「10日後ぐらいからバタバタ学校の用事とかがあるから、とにかく早くやって欲しいんです。前もすごく腫れたんで…。それに前の糸とか取らなくてもできるって、別のところでは言われたんですけど…。今日埋没法のお金しか持ってないし…。」

岩本「確かに前の糸を取らない先生の方が多いかもしれないね。他の医者のやった糸をとるのって、ものすごくめんどくさくて細かい作業だから、できれば僕も避けて通りたいところなんだけど…。でもやらなきゃいけないことだから…。お金は今日全額じゃなくてもいいよ。それに腫れは大丈夫。僕がやれば…。1週間後にやっても10日後には全然普通でいられるから。」

Eさん「はぁ…。」

 僕は一生懸命彼女に説明した。だが彼女にはなかなか理解してもらえなかった。その人の希望する内容ではなく、どちらかといえば聞き心地の良くない内容を理解してもらう事は、実は手術よりも労力のいるものだった。
 【彼女の希望通り、糸を取らないでそのままやっちゃおうかなぁ…それが俺も一番楽だしなぁ…】そんな思いが一瞬頭をよぎった。だけどやっぱりそれはできなかった。

 結局彼女はその日何もしなかった。あれから1週間がたったが、彼女からの予約の電話は無かった。どうやらまた今度も彼女は他院へと行ってしまったようだ。
 

 あの日以来、彼女は僕のクリニックには来ていない。今彼女の眼がどのような状態かはわからない。ただもしまた何か調子が悪いことがあれば、来づらいかもしれないが気にしないでまた僕に診せてほしいと思った。

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