ホームひとりごとタイム脂肪吸引ではむずかしい下腹のでっぱり(Dさん48歳 主婦)

 その女性はどこから見ても普通のお母さんだった。彼女は下腹のでっぱりが気になるとのことで脂肪吸引を希望し来院された。

 僕はいつも通り腹部を診察し、 脂肪のつき具合を確認してみた。すると彼女の下腹のでっぱりは脂肪によるものではなかった。経産婦さん(この女性も三人の子供がいる)にはよくあることなのだが、加齢と共に下腹部の筋肉がゆるみ、内臓脂肪の増加などで腹壁が前に押し出された状態だった。したがって皮下の脂肪吸引のみでは限界があり、でっぱりを完全に治すことはできなかった。
 僕はその事を彼女に説明した。すると彼女は一瞬がっかりした表情をみせたが、あきらめないでさらに僕に聞いてきた。

Dさん「でも先生、少しは変わりますよね…?」

岩本「少しは変わりますけど…」

 僕は明らかに気の乗らない感じでそう答えた。だが彼女の手術への意思は変わらなかった。

 結局、本人の強い希望により手術は行われた。そして2週間後、仕上がりをチェックするため彼女の検診をした。

岩本「もう腫れはありませんし、だいたいこのくらいなんですが…、どうですか…?」

 僕は本当は彼女にそのことを聞くのを避けたかった。満足されていないのは明らかだったからだ。しかし執刀した医師としてどうしても聞かなければならなかった。

Dさん「うーん…、少しは変わった気がするけど…、やっぱり先生がおっしゃった通り、でっぱった感じは完全には治らないみたいですね。」

 彼女に笑顔はなかった。なんとなく診察室に重い空気が流れた。だが彼女はすぐ明るく言ってくれた。

Dさん「でも先生も一生懸命やってくれたし、しょうがないです。ちゃんと難しいって聞いていましたから納得しています。やってみてよかったです。すっきりしました。」

僕はその言葉に救われた思いがした。

 手術から3ヶ月ぐらいしてからだろうか。彼女は再びクリニックに来た。僕はてっきり手術したところに少し痛みが残っているのかなと思い「Dさんどうしました?」と聞くと彼女は「先生、お腹は大丈夫です。今日は目尻と口元のシワが気になって。これってすぐに治ります?簡単にできるんだったらやりたいわ。」

 彼女は再び僕の治療を希望してくれた。僕は嬉しくなって「それは簡単に治りますよ。ちょっとチクッとしますが、今度は大丈夫ですよ。」と答えた。
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