ホームひとりごとタイム心の美しい女の子(Bさん18歳 学生)

 3月の中頃、彼女は僕のクリニックに来た。ようやく受験も終わり、きのう高校の卒業式を終えたばかりだった。4月から神戸の女子大に行くと言っていた。その前に長年の希望であった二重の手術をしてパッチリ二重を手に入れ、新しい自分となって新たなる生活をスタートさせようとしていたのだ。

 彼女は内気でおとなしい感じの女の子だった。それにどこか田舎っぽい感じもしていた。彼女の心の美しさ、素朴さが、その外見からもうかがえた。
彼女はカウンセリング中、僕の話をずっと恥ずかしそうに聞いていた。そして僕が一通り話し終えると、僕に何一つ質問することなく、最後小さな声で 「おねがいします」 と言った。

 手術は埋没法を行った。何の問題もなく20分程で終わった。どうやら彼女の希望通りの二重ができたようだった。もともと完全な一重だったせいもあるが、少し二重にしただけで別人と思える程かわいくキレイになった。彼女も自分の目を見てとても嬉しそうだった。僕は彼女の新しいスタートに少しでも力を貸すことができ、医師として、美容外科医として喜びと幸せを感じることができた。

 3日後、また彼女がクリニックにやってきた。何だか少し元気がなかった。オペをした眼に異常はなさそうだが・・・

岩本「Bさん、どうかしましたか?」

Bさん「二重を外して元に戻してほしいんです…費用はかかっても構いませんから…」

岩本「えっ…」

 それは思いがけない言葉だった。彼女はこの3日間悩みに悩んだようだった。一日中鏡で自分の顔を見てみては、手術という方法でキレイになった自分をなかなか受け入れられないでいるみたいだった。
何か卑怯な手を使ったんではないかという罪悪感にとらわれてしまっているようだ。それほどまでに、彼女は本当に心のきれいな女の子だったのだ。

岩本「Bさん。元に戻すことは簡単だけど、まだ時間はあるからもう一度考えてみてはどうかなぁ…。手術をして自分の変化に戸惑う人はいっぱいいるけど、キレイに美しく変化しているのであれば、みんな必ずよかったって思うようになるもんだよ。Bさんももう少し時間が経ったらきっとそう思うんじゃないかな…。手術といってもそんなにすごい事をしたわけじゃないし、周りにはアイプチをしてたらそのまま二重になっちゃったっていえば大丈夫だよ。手術の感じは全然しないから。とにかく神戸に出発するぎりぎりまで待って、それでも考えが変わらなかったら、その時は戻そうか…。Bさんがどんな結論を出しても、必ず僕が最後まで診させてもらうから…大丈夫、安心してね。」

Bさん「はい」

 彼女はそう素直にうなづいてくれた。

 その後、4月に入ってからも彼女からの連絡はなかった。僕は彼女のことがとても気になっていた。もしかしたら彼女はもう僕の診療を受けるのがイヤで、他院に行ってしまってるんじゃないか、そしてもう二重を外してしまってるんじゃ…
【あの時ちゃんと彼女の希望どおり外してあげればよかったかなぁ…】
 僕は少し後悔していた。彼女にその後調子はどうですか…と連絡してみようかとも思ったが、もし避けられてしまっているのではと思うと、なかなか連絡する勇気がわいてこなかった。

 5月のはじめ、クリニックに一件のメールが届いた。彼女からのものだった。
先生、いろいろありがとうございました。あの時先生の言う通りに外さなくて本当によかったです。今とっても自分の眼を気に入っています。前よりも雰囲気が明るくなったってみんなに言われちゃってます。夏休みに地元の友達を連れて行くのでまたよろしくお願いします。僕はそのメールを見て目頭が熱くなった。本当に良かったと思った。

 僕は夏休みに彼女に会えるのが待ち遠しかった。僕の熱くなった瞼の裏には、神戸のおしゃれな女子大生になった彼女の姿が浮かんでいた。

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